5)三星電機の金型
 |
|
精密射出金型
|
@ IT化と金型技術の融合
 |
|
精密プレス金型
|
同社の金型工場は、技能より技術、ハードウェアよりソフトウェア、経験よりもデータベースを重視し、時代の先端を行くIT化で武装している。
もちろん金型産業は経験を重視する技術であるが、その体験した経験を分析し、実験を加え、より最適化されたデータベースをもとに制作するのが、新しいデジタル時代の差別化された金型作りとなる。
崔常務は、「未来の金型技術の競争力はIT化と金型技術を如何に融合するかによって、金型技術は差別化される」という信念をもとに10年前から実践してきており、大卒の新入社員が入社するとまず、3年間は直接機械加工等の実務を経験させる。その後、要素加工部品の技術開発やソフトウェア開発業務を担当させて経験を積ませる体制をしいている。
また、金型製作の中でいろいろ特化されている技術の一つがE-CIM体制である。これは、製品3Dモデリングデータをネットワーク上で貰ってからRP制作、射出成形解析、短納期簡易金型製作システム(同社ではQDMという)や3Dbased金型製作システムの確立であり、これにより初期品質の安定化と納期短縮を実現している。
さらに金型工場の現場には二つのネットワークが構築されている。一つは独自開発したソフトウェアとしてバーコードによる「リアルタイム金型生産管理システム」、もう一つはCNC工作機械を制御するDNCネットワークである。
ネットワークライン上には、自動NCデータ生成ソフトウェア等、100個以上の自主開発した専用ソフトウェアが同社の金型技術の競争力を培っている。
|
|
|
|
|
|
|
FBT
部品
|
|
精密DC
Moter Core 部品
|
VTR
Deck 部品
|
Head
Phone Stereo Desk 部品
|
|
写真1 プラスチック型、プレス型とその製品例
|
A 金型技術の沿革
これまで、同社の概要に触れてきたが、同社部品製造の全てのキーテクノロジーを引き受けてきたのが金型製造部門である。
写真1に示したように5部門に分かれた製品群を細かに見ると、精密電子・電気部品が並んでおり、これらの部品の品質を維持するのは、基本的な技術の積み上げがないと製品としての信頼性が保証されない。
今回、この金型工場の統括責任者である崔翔錬金型開発室長(常務)にインタビューし、金型工場を案内してもらうと同時に、写真撮影も二つ返事で快諾された。
同社の金型工場は、日本の大手内製金型工場に見るごとく、常時22℃±2℃、湿度55%以下に管理され、アジェ、ムーア等の優秀な世界の工作機械がずらりと並んでおり、10数年前に韓国の大手企業から引き抜かれてきた崔常務は、現在の同社の金型技術を育ててきた功労者である。
|
表 1
|
|
区 分
|
設備名
|
台数
|
|
Cutting
|
NC Lathe
|
1
|
|
NCMillingMachine
|
3
|
|
MillingMachine
|
3
|
|
CNC Die Sinking & Engraving Machine
|
1
|
|
Machining Center
|
6
|
|
jig Boring Machine
|
2
|
|
Grinding
|
Surface Grinding Machine
|
2
|
|
Forming Grinding Machine
|
10
|
|
Universal Grinding Machine
|
2
|
|
Tool Grinding Machine
|
3
|
|
jig Grinding Machine
|
4
|
|
NC Profile Grinding Machine
|
2
|
|
Wire & EDM
|
NC Wire Cutting EDM
|
11
|
|
NC EDM Machine
|
9
|
|
Pin Hole EDM Machine
|
1
|
|
Heat Treatment
|
Vacuum & Quenching Machine
|
1
|
|
sub−Zero Treatment Machine
|
1
|
|
etc.
|
Band Sawing Machine
|
1
|
|
Measurement device
|
3 D-Coordinate Measurement Machine
|
2
|
|
その他、多数の測定装備保有
|
|
同社の金型技術の沿革を見ると、
1976年:金型製作と量産開始
1982年:オーディオデッキ等小型精密部品金型製作開始
1989年:全国精密度競技大会大統領賞受賞
1989年:金型専用CAD/CAMシステム導入
1995年:精密試作品・簡易金型製作システム確立
1995年:金型業界では世界初のISO9001取得
1996年:3度目の全国精密度競技大会大統領賞受賞
1997年:成形技術センター設置
1998年:自動車部品核心部品開発
2000年:金型大学開講
2001年:「金型大学」で社長表彰「新知識人」受賞
以上のように、同社の金型技術の歴史は、金型工場の立ち上げのときは日本人技術者の支援を受けてはいるが、そのの金型技術レベルアップのための苦闘の歩みでもあった。これまで、崔常務は「技能に理論武装を付加して、高度な金型作りができる技術者」を育てること一筋に歩んできた。「この結果を日本の金型技術と比べてみたい」とその苦労を語る。
崔常務は、同社の金型は90%から95%が内製金型であり、その50%は海外工場で使用しているという。特に中国の東莞工場では一貫生産と金型製作が始まっている。ただし、まだ、難しい金型は本社でこなしているが、簡単な金型は現地生産している。表1は金型設備一覧。
B 生産金型の種類
 |
|
写真2 崔常務
|
主要な金型生産は、高精密プラスチック金型(60〜70%)・プレス金型(30〜40%)の他、成形加工とプレス加工、精密メカ部品の組立、金型設計製造用ソフトウェア・DNCのソフトウェア・金型生産管理用ソフトウェアの販売も手掛けている。
1)プラスチック金型:主な製品は、フライバックトランスファー・デフレクションヨーク・パソコンキーボード・レーザピクアップ等
2)プレス金型:VTRデッキ・カムコーダーデッキ・DCモータコア・ヘッドホーンセテレオデッキ・チューナ部品等
C「金型大学」設立で技能者から技術者へ
同工場のメインフロアに入ると、否応でも目に入るのが「金型大学開講」という横断幕である。 2000年3月に崔常務が金型工場の意識改革と技術力向上のために、136余名の金型工場の職員に宣言した(写真2(崔常務)、写真3(工場にかかっているスローガン))。
|
表 2 三星電機の金型大学カリキュラム
|
|
No
|
科 程 名 |
|
1
|
射出金型理論および設計 (l , ll) |
|
2
|
Press金型理論および設計 (l , ll) |
|
3
|
金型基礎製図 |
|
4
|
CAD CAM (l , ll) |
|
5
|
成形解析 |
|
6
|
研削,金型材料理論および実務 |
|
7
|
放電加工理論および実務 |
|
8
|
Wire 放電加工理論および実務 |
|
9
|
精密測定 |
|
10
|
切削加工 |
|
11
|
技能長科程 |
「これからの三星電機の金型技術を世界に通じさせるために、“技能と技術”を結合する。そのために金型大学を開講する」と。
当初、崔常務は136余名の職員が賛成してくれるかどうか、心配だったと振り返って話す。しかし、この大学に参加する出席率は95%を超え、職場から反対する声が聞かれなかったばかりか評判がよく、2001年の仕事始めの日に、社長から「新知識人」という表彰を受けた。かつて、職場の「ホームページ制作競技」でも社長表彰を受けており、これで2度目の受賞となる。
この金型大学は、韓国の大学と同じカリキュラムを編成、講師陣は10年以上のキャリアを持つ課長クラスが勤め、1週間に1度、16時30分から18時30分の2時間の講義をする。成績により、優秀者は海外の展示会見学、人事考課上の評価や10万ウオンの商品券等のインセンティブが与えられる。
表2は同社金型大学のカリキュラム、表3は韓国の4年生/2年制大学に設置されている「金型学科一覧」。
|
表 3 韓国の金型学科 4年/2年生大学
|
|
No
|
学校名
|
2001'卒業人員
|
学科名
|
教育期間
|
|
1
|
ソウル産業大学 |
61
|
金型設計科 |
4年生
|
|
2
|
釜慶大学 |
46
|
精密機械工学科 |
4年生
|
|
3
|
東ソウル大学 |
24
|
Computer 応用金型設計科 |
2年生
|
|
4
|
東義工業大学 |
38
|
金型設計科 |
2年生
|
|
5
|
水原科学大学 |
38
|
金型設計科 |
2年生
|
|
6
|
嶺南理工大学 |
11
|
金型設計科 |
2年生
|
|
7
|
蔚山科学大学 |
51
|
金型設計科 |
2年生
|
|
8
|
棚絶大学 |
30
|
金型設計科 |
2年生
|
|
9
|
全州工業大学 |
33
|
金型設計科 |
2年生
|
|
10
|
天安工業大学 |
6
|
金型科 |
2年生
|
|
|
合 計 |
338名
|
|
2年生
|
D 金型工場の 6 Sigma
今、日本でも注目されている管理手法である「6Sigma」による品質管理と生産性向上活動をこの金型工場で活発に展開している。すでに1年半の実践活動で、金型工場に適用して大きな成果が上がりつつある。
この6Sigmaは体系的な活動で、全ての問題点を統計的にデータ化して改善活動をする科学的な方法であり、今後、多くの金型メーカーにも導入が進むものと思われる。
この6Sigma改善活動のプロセスは、金型の品質水準を最高(6Sigma)に導く手法であり、測定(M)、分析(A)、改善(I)、事後管理(C)の4段階のプロセスにより部品の品質を改善及び生産性を向上させる。崔常務はこの品質管理手法を実践することにより、「機械加工の精度向上・ジグの改善・最適加工条件へのデータベース構築等の改善成果を得た」という。