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(やはり)メード イン ジャパン (Still)made
in Japan
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| 東京発:日本の製造業は中国の安値競争にどう対応しているか |
日本の製造業はこれまで海外、特に目立って中国に移転しつづけてきた。理由はいろいろあるが、日本の賃金が中国に比べはるかに高く、率にすれば20-30倍もするからである。しかし、もっと仔細に見れば日本の製造業が直面している脅威は中国だけではない。個々の企業に聞いてみると、中国同様アメリカやヨーロッパでも激しく競争しているという。会社によってはサムスンやヒュンダイなど、韓国の企業の技術力に最も関心を寄せている。
多くの日本企業は海外からのローコストの競合に対抗するためにいろいろな戦略を立ててこれに打ち勝とうとしている。その中には比較優位の立場から競争をすすめられる幸運な会社もある。トヨタやキャノンのようなトップ企業は、競合メーカーが真似のできないほどはるかに進んだ高度で複雑な統合生産システムを開発している。その他の部門では、企業は長い間競争力の源泉であるトレードシークレット(企業秘密)を守ることが最も大事であることを学び、生産活動を再び日本に戻して、ライバルにその秘密が漏れないようにしている例もある。
日本の弱点はローコストの大量生産品にあり、それは逐次低賃金の国々へ移転してきた。
(ヨーロッパやアメリカの本国脱出にも見られたことだったが)
ローコスト製品の分野で、国内にとどまって競争してゆこうとしている例は極めて少ない。そのひとつの例はスズキ自動車だ。最近のヒット商品は極端に安い価格帯を狙ったスクーターで、値段は標準のスクーターの3分の一のものである。年の短距離のユーザーのものとして開発されたそれは、いくつかの部品を取り外した。たとえば嘗ては絶対欠かせないとされてきたリヤ−サスペンションなどである。これは利口なやり方ではあるが、日本での低コスト商品の生産はニッチ商品に限られるだろう。スズキもこのような努力は、とても避けられないこれからの流れの中では、"ムダなアガキ"であるかもしれない、と認めている。
昔ほど介入しなくなったとはいえ、日本の政府も日本の製造業、とくにハイテク部門が海外に出てゆくことを懸念している。確かに.考えようによっては一企業が中国に工場を建設すれば、技術はたちまちコピーされ、その工場の日本のすべてのライバルが安値競争にさらされることになるかもしれない。
福田ヒデタカ氏は経済産業省のためにIT技術を研究しているが、氏によればMETIは今年初めエレクトロニクスの巨人、NECを説得して、プラズマディスプレーの事業を外国投資家ではなく、国内のライバルのパイオニアに譲渡させ、技術が国内にとどまるようにした。福田氏によれば何十というほかの企業について現在同じような交渉を進めて技術が海外に移転することを防ごうとしている、とのことである。
ときに低賃金が海外移転の主な理由でないこともある。たとえば自動車メーカーや建設機械メーカーの言うところによれば、海外に立地するのは単に顧客の要望に従ったまでである、としている。トヨタにつぐ日本第二の自動車メーカーであるホンダは市場に近いところに工場を建設することによって生産期間や流通コストを切り詰め、為替差損を回避することが出来るとしている。
研究開発を海外に確立する場合は、その地域のニーズにあった仕様にあわせるためである。たとえばアメリカでのスポーツユーティリティカーのように、日本ではあまり必要とされない荷物の積載スペースを広くした車などがその例である。
溶接などのような製造技術の高度化は引き続き日本で行われている。実際にも、多くの企業はコアとする技術を国内にとどめて機密を保つ一方では、低付加価値の生産機能とアセンブリを海外に移転している例が多い。
たとえば、日本最大の半導体メーカーの東芝は、ハイエンドのチップに特化する路線を走っており、過去の過ちを繰り返さない、といっている。当初、東芝は韓国のチップメーカーと基本的なDRAMの生産で協力していたが、DRAMはやがてはコモディティ(汎用の安物)となり、予想よりかなり早くライバルの独占するところとなってしまった。
他の企業の例では国内で生産することに付加的なメリットがあることを発見した。ケンウッドの新社長、カワハラハルオはマレーシアで作っていたミニディスクプレーヤーを山形に戻した。この"インソーシング"によっていろいろな面で利益が上がるようになった.このことから日本の製造業のあり方を長期的な視点で見たときの、三つの利点が浮かび上がってくる。すなわち、特別に訓練された作業者、不良率の低さ、そして在庫コストを引き下げるとともに"リーン"な生産工程と生産のフレクシビリティを高めること、がそれである。
ケンウッドのマレーシアの出たり入ったりする作業者と違って、山形工場では作業者がいくつかの異なる作業をマスターできるほど定着率が高い.典型的な山形の作業者は組立作業の4つから5つの工程をすばやく片付けて次の工程に渡す.これに反してマレーシアの作業者はひとつの工程をこなすだけだ.最近では山形ではミニディスクプレーヤーを組み立てるのに4人で済むのに対し、移管以前のマレーシアでは22人の作業者が必要であった。また、日本の工場の必要面積は70%少なくなり、不良率は80%も下がったのである。 |
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金型の仕事
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日本の製造業の中で、低く見られているが大変重要なセクターは、この国の金型メーカーである。普通小人数の従業員の、規模の小さい目立たない企業で、彼ら職人たちは、薄暗い陰気な、磨り減った機械やスクラップでいっぱいの大き目のガレージのような建物の中で働いている。工業用の金型はわれわれの身近にあるすべてのもの、ボールペン、玩具から携帯電話宇宙衛星の部品にいたるまで形を創造し成型する。金型工の多くは50から60代だが、彼らは仕事を子供のときから覚えてきた。
一番よい金型は、東京の南部と東部の大田、品川、墨田の三区に集まっているが、しばしば母型も含めて世界で一流の自動車や家電製品の型だけでなく、NASA,すなわちアメリカの宇宙開発公社の仕事までやっている。
「金型作りの技術はすべてのモノ作りの基本です。もし金型がなくなるようなことがあったら、それは日本の製造業全体が危ないというサインです」と木下氏は警告する。その警告灯がもうついているのかどうかについては、意見が分かれる。墨田区では1940年以来40%の金型企業が廃業した。(この間新規開業はたった一軒だけだった)しかもこの残った企業の3分の1以上は、今年の初めは仕事がなかったと、経済評論家でこれまで4000社以上の金型メーカーを調査してきた大内幸夫氏(元NHK論説委員)はいう。このことは日本全体像の縮図だ。大田区の、ある通りはかつて一流の金型メーカーやその他の小さい工場でいっぱいだったが、いつのころからか「倒産通り」といわれていたのが、その後「自殺どおり」とよびかえられた。これは債鬼からの脅迫がいっそう激しくなったことを反映したものだ。コーヨー精工の社長の堀カズオは、仕事の半分がこの一年ほどの間に中国に取られたという。
いくつかの大規模メーカーが、国内のほうが品質がよいため日本に戻ってきてはいるが、多くの金型メーカーは親会社がいない間に消えてしまった。さらにわずらわしい問題は、最近節操のない大企業が、中国の廉いメーカーに作らせるために型の設計図を盗用するということである。
それでも日のあたる部分もある。自動車部品や携帯電話に特化している金型メーカーはブームに沸いている。業界全体としては停滞しているにもかかわらず、一流の金型企業の多くは何とかやっていると、大内氏はいう。また多角化も役に立っている。泉金型のボスの泉トオル氏は日本のすべての自動車会社の名をあげたあと、1990年代後半以降、BMWやジャガーなど外国車が、泉金型の型で作られたカーオーディオのパネルの利用者になったという。
日本の製造業のうち、どの部分が生き残って繁栄することができるかは、経営者の製品の路線の選択と、それを固守し、改善してゆくという、日本固有の強さに依存する。
「21世紀の日本の製造業の戦略」のなかで、東京大学藤本隆弘教授のいうところでは、指摘するまでもない簡単なことだが、日本は高付加価値生産に特化すべきだとしている。氏の論点は、日本の製造業が本当に強いのは「一つの機械の多くの部品が細部にいたるまで注意深く設計され、そしてそれが最適の作動をするように部品相互が正しく調整されているような製品」という点である。そうするためには、一企業の中で緊密なチームワークが必要とされるだけでなく、サプライヤーとの協同も必要なのである。 |
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日本流のやりかた
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このように異なった技能や技術を融合する能力は、日本のいくつかの分野で共通のものである。たとえば、コピー機で業績をあげているキャノンやリコーなどは、精密な機構と、ドナーインクのための先端的な化学処理と、サービスの熟練度を併せ持っている。自動車もまた、いろいろな技術の集合体である。
「自動車にはコア技術などない」と、日本のトップメーカーで、去年アメリカのフォードを抜いて世界第2の販売台数を達成したトヨタの生産管理と調達の主責任者である、木下ミツオはいう。
例えば、彼の説明によれば「ハイブリッドシステム(ガソリンで動くエンジンと、電気モーターを組み合わせたもの)を研究所で完成しただけでは不十分で、それを実車に搭載したときに完全に動くかどうかを確認するには、研究所と同じくらい専門の機能が必要」なのだ。
日本最大の建設機械メーカー小松の社長坂根マサヒロは、異なった技術を融合させて開発し、それを新規のビジネスモデルとしてものにするのは難しいこと、という。しかしそれをうまくやり遂げると成果は大きい。小松は3年前、盗難予防のためと、機械のレンタル会社が個々の掘削機の残存燃料を常時把握するのを支援するために、油圧式掘削機にGPSなどのIT技術を付加した。これが小松の中国での販売促進に大いに貢献した。中国で信用収縮が始まり、銀行がGPSつきの掘削機は、危ない貸付金を常時捕捉するのに有効だと判断したからである。
日本の製造業者が優位にある地位を維持するために現在どんな努力しているかを見るのに、最適の例がオムロンである。この会社はその他の製造業者のアセンブリーラインに精密なセンサーや、スキャンニングのためのデバイスを供給しているが、日本の国内の製造業者だけでなく、中国で(その他の国も含めて)工場を立ち上げようとする企業にデバイスを販売している。中国の工場も生産手段を向上させており、そのためにオムロンの機器を多く買うようになっている。しかし、日本の工場もじっと立ち止まっているわけではない。
オムロンの製品のうち、日本でも中国でもよく売れているのは、プリント基板の検査用のスキャナーである。中国では、ひとつのラインの終わりにスキャナーを置けば十分だ:欠陥品は廃却して残りを顧客に納入すればよいのである。しかし極度に能率的であることを求められる日本では、欠陥品を端末で見つけることなどは、遅すぎて恥ずかしいくらい無駄なこととされている。そこでオムロンでは日本の顧客向けに、いくつかの基板用スキャナーをいっしょにつないだ新しいシステムを開発した。何か不具合が発生したら、高度のソフトウエアが警告信号を出し、直ちにどの機械が修正を要するかを指摘するのである。 |
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キャノンが発射(注:Canon firing,
社名のキャノンとキャノン砲をかけてタイトルとしてある)
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高級複写機からデジタルカメラの光学部品や半導体・フラットパネルディスプレイ製造のための高額なハイテク商品を作っているキャノンは、海外からの攻勢に対し日本の企業がいかに態勢を整えているかのひとつのよい見本を示している。そのボスである御手洗富士夫は今年の始め、今後三年の間にキャノンの全世界における投資の80%は日本向けとするといっている。いろいろ投資の対象はあるが、そのひとつはハイエンドのデジタルカメラの工場を大分県に、また新しい研究センターを東京に作ることとなっている。
キャノンは決してアウトソーシングに無関心であるというわけではない。世界全体の生産のうち42%が海外である。しかし技術競争力と、高い利益率をともに維持するためには、海外でのローコストの生産と、日本で達成する精密なハイテク技術をバランスさせなければならない。
御手洗氏が最近エコノミスト誌に語ったところによれば、氏自身投資を割り当てる目安として、次の点を上げている:生産コストの5%以上が人件費である場合はすべて中国その他低賃金国の生産とする。なぜならキャノンが研究開発に投資しつづける限り、日本でやるべきことは無限にあるからである。
例えば、半導体生産に使われる一台2千2百万ドルで売れる露光式ステッパーは、レーバーコストがわずか2%である。
しかし、御手洗氏のように中国についてゆとりを持って対処できる日本の製造業のトップは数少ない。例えば、日本の巨大な半導体業界では、急速に進むデジタル化の波が業界のリーダーたちに、中国の担う役割を長期的に、また真剣に考えさせることとなっている。
新しいデジタル機器の急速な発展−例えばDVDプレーヤー・携帯電話やデジタルカメラなど−の結果、中国は今までのようにやさしいものから段階を経て難しいものに移行する仕組みから、はるかに簡単にグローバルな製造業の中に参加しやすくなった。今は、次第に高度化してゆくことが必要なアナログ機器と違い、それらを馬とびのように飛び越して新しい、作りやすいデジタル製品に取り付くことができるのである。
例えば、中国がもし在来の高級なフイルムカメラをやったとしたなら、複雑な光学的、化学的および機械的な工程を完全にマスターしなければならなかっただろう。しかし中国の工場はデジタルカメラの組み立てにはほとんど苦労していない:やらなければならないのは、部品同士を組み合わせたときうまく作動するようにあらかじめ設計されている部品を日本から調達することだけである。
このようにデジタル化が広まってゆくことと中国の膨張とが、日本のエレクトロニクス業界に大きな変化をもたらしている。
第一に、それは多くの最終商品のメーカー(例えばソニー、シャープ、松下パナソニックなど)と多くの特定の材料製造業者、生産プロセスに投入される部品や設備メーカーとの関係が薄くなってしまったことである。
第二のそれにも関連する変化は、長年にわたって日本の製造業者が、長期にわたって守ってきた企業秘密の壁が急速に崩れてゆく、という点である。中国やその他の低賃金国は、デジタル商品を作るためには日本からの輸入を必要とするから、これらを供給する日本の特定のサプライヤーと装置メーカーはこれまで非常によい業績をあげてきた。かれらはそれぞれ特別にニッチのマーケットで、グローバルに大きな市場占有率を得ている:例えば半導体関連のセラミックスその他の精密材料、HDDやデジタル機器用の小型モーター、液晶パネル製造用の高級な機械などである。これとは対照的に、大きな耐久消費財向けエレクトロニクスメーカーでは、広範囲に部品と最終製品を作っている。成長しつづける中国の生産基地と、デジタル商品の拡大は、その結果として大企業にとって複雑な脅威とビジネスチャンスが混在する問題となっている。最近になって、携帯電話、デジタルカメラ、DVDレコーダーなどが、フラットパネルのTVやその他のハイエンドの家庭用エレクトロニクス商品とともにそれらの企業に活況をもたらしている。しかし、それでもなおこれらの企業は厳しい競争にさらされ、常に低くなっている利益を確保するためにコスト削減と、新しいモデルを供給するための努力を続けなければならない。かくて彼らは競合相手に負けないためには、生産を中国に移転しつづけなければならないのである。 |
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シャープに見る(注:Looking Sharp-
会社のシャープと物事をシャープに見ることをかけて表題としている)
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製造機能が急速に韓国、台湾、中国に移転した結果、日本の企業はこれまでより厳密に、どの技術を国内に維持し、どの作業を日本から移転させるかについて考える必要に迫られた。なぜなら彼らの競争力の相当部分は、堅く守られた企業機密に依存しており、これを守りつづけることがより難しくなってきているからである。
今年始め、シャープはフラットパネル生産のため三重県の亀山に"第6世代"の工場を新設した。これによって第5世代工場で作られるパネルよりかなり大きいサイズを作ることとなった。シャープ(そしてライバルの三星も)はこの技術のフロンティアを追求している。この新工場建設にあたっては、何十にも上る複雑な工程を選び出し、そして各工程それぞれに固有の特殊設備を設置、かつそれぞれの工程が切れ目なくつながり、ほとんど不良品なしにデリケートなパネルを作り出さなければならない。こうしてもし今までよりも大きなフラットパネルTVを、この新しいずっと効率的なプラントから供給することになったら、シャープの得るべき成果は、競合相手のないハイエンド商品によって大きな利益となって帰ってくる。
シャープの主だったサプライヤーはほとんど日本企業である。このことは三重県にとってビッグニュースだ。なぜならシャープの亀山工場に近いところで50工場以上の団地が誕生、三重県の再活性化につながるからだ。しかし、シャープにとって不幸なことに、これらのサプライヤーは同時にライバルとも、その多くは台湾企業だが、密接な関係がある。亀山工場のペンキが乾くか乾かない間に、台湾の模倣者たちは、すでに一斉に自分たちの第6世代のプラントを作り始めた。
シャープはライバルの追従を防ぐために、大いに努力している。機械が故障すると、エンジニアたちはサプライヤーに連絡する代わりに、社内で修理している。装置のメーカーがライバルに同じ物を売った場合、機械にどんな不具合が起こったかをまったく教えないための措置である。同じ理由でシャープは導入されたある種の機械について、ひそかにソフトウエアを書き換えている。
このような数多くの小さいステップの積み重ねによって、シャープはグローバルなマーケットにおける地位を、すくなくともしばらくの間侵食されることから守ることとなるだろう。日本のその他のメーカーもこの教訓やその他の教訓を吸収してきた。リーンマニュファクチャリングを創造した日本の製造業は、低コストの競争相手が安値攻勢をかけるのを黙認しているわけではないのである。 |