「ITC 公聴会報告」

はじめに

 2002年5月21日、アメリカITC(International Trade Commission)による金型の国際競争力調査事業の公聴会が開かれた。ITCの調査が行われた背景についてはさきにお知らせしたが、ITCの調査官2名が6月中旬日本にも来訪、金型各社を訪問するほか米国大使館で黒田ほかよりヒヤリングを行った。

 以下はアメリカの工業会による公聴会の報告で会員各社に配布した資料である。

業界はアメリカITCの聴聞に結束

 メンバーのうち精密機械加工産業と金型産業は、要請にこたえて大挙U.S. Internatinal Trade Commissionn の公聴会に参加、海外からの競争が如何に業界に影響を及ぼしているかを証言した。公聴会はワシントンDCのITC本部で行われ、全米各地から業界のリーダーたちが証言のため参集した。

 カリフォルニア州ガーデナのTCI Precision Metalsの社長であり、今年度のNTMA(National Tooling & Machining Association)の議長のMr. John D. BelzerはITC側に、理事会議長としての在職期間中に数多くのNTMAの会員企業を訪問したこと、そして“悲しいことに多くの会社が海外からの、主として賃金、付加給付、税金、輸出入税、法律、規制や企業倫理などがわれわれのそれとは大いに異なるか、あるいは全然別である国々の、不公正な、滅茶苦茶の価格によって廃業を余儀なくされている“と証言。

 NTMAの会長、Matt Coffeyは産業の概況につき、ツーリングや機械加工産業の市場規模や、いわゆるグローバライゼーションや技術、顧客産業の変遷の影響をどのように受けたかをCommissionに説明した。

 それらに加えて、下院議員で下院中小企業委員会委員長のDon Manzullo(共和党―イリノイ州選出)は”連邦政府が“何らかの対策を立てなければ”ツーリング及び機械加工産業の消失によって米国の量産産業は大きな打撃を受けるだろう、と言明した。このような気持ちはその後を受けた、下院議員Phil English(共和党−ペンシルバニア選出)で強い権限をもつ下院の政策委員会の委員である氏のスピーチによって強く増幅された。氏は、第二次大戦中この業界の人たちは勝利のために必要な武器を生産するため、徴兵を免除されたことを想起し金型業界の重要性を繰り返し強調した。

 すべての証言は立派なものであり、明らかに証拠となるものであった。Commissionからは各証人に対し難しい鋭い質問が発せられたが、すべてそつなく回答され、Commission側の納得を得ることが出来た。

付記

 Commissionの最終結論は、アメリカの中間選挙を間近に控えた10月末に出る予定である。

 スロベニアでのISTMA理事会の機会に数名の理事に様子を聞いたところ、アメリカの関係者はデリケートな問題だけに答えがなかったが、アジアからの出席者によると、ITCは何らかの不公正取引の証拠をつかんだようだ、とのことであった。

 日本がその対象となることはないと予測しているが、中国を含む新興金型生産国に対しITCがどのような結論を出すのか注目を要する。
アメリカの製造業の空洞化により、アメリカのNTMAの会員数は2,3年前の3,300社から2,300社に減少した。アメリカの業界の危機感の強い所以である。

 最近の傾向として顕著に見られるのはNAFTA成立とともにメキシコを製造拠点に選んだ大企業が、拠点をメキシコから中国に移しているとのことである。メキシコの場合は地理的な関係で機械加工、金型の発注はアメリカのサプライヤーになされることが多かったが、いまは中国に供給先を求めている。

 中国の金型の市場規模の伸び率は年13%強と最近中国の金型工業会から発表されたが、これが国の経済成長率の2倍程度であることもこの辺に理由がある。中国は金型については現状では輸出よりかなり輸入が上回っているが、供給能力が高まればやがて市場を海外に求める可能性は高い。

(2002年8月27日 黒田精工 黒田記)

 

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