「国際金型協会(ISTMA)各国業況報告」
2001年5月

【レポート提供に関して】
 国際金型協会の定期報告が黒田精工株式会社会長の黒田彰一氏(2002年1月1日より同協会会長に就任予定:任期3年間)により訳出され、その原稿を当社が入手しました。このような世界主要国の金型産業の状況を知りうる機会がありませんので、黒田氏了解のもとに掲載します。内容等に関する問い合わせは、直接黒田氏にお願いします。

電 話 044−555−3800
E-mail sk7235@olive.ocn.ne.jp


 

 これは2001年7月にだされた"ISTMA"傘下各国の業況報告書である。現在は7月以降の世界経済の停滞や,とりわけ連続同時テロの発生などで状況が一変、景気はさらに悪化したが,この報告の時点ではヨーロッパ,とりわけドイツ,スイス,フランスなどは絶好調であった。

 これに反し不況を報じているのはアメリカ,日本、おおきくはユーロ安,ドル高,円高によって世界の製造業の勢力分野が大きく転換したことが根底にある。今,日本の製造業はなだれをうって中国に移転しているが、中国元は不当に安くはないのか。とくにアメリカはこの数年間ニューエコノミーで好況を謳歌していたが、こと製造業,特に金型については2,3年前から構造的な低落が始まっている。その要因は製造業にとってドルの為替レートが高すぎるから輸入に代替される、としている。

  アメリカで起きた構造変化は今日の日本の姿であろう。その意味で特にアメリカのレポートは参考になる点が多い。今回は日本を除いて、台湾・韓国、その他のアジアの諸国も統計がないためもあって報告がなかった。皆様の多少の参考になれば幸いである。

2001年10月8日
黒田精工(株) 黒田彰一


ISTMA会員国業況報告(ISTMA BRANCH REPORT)

目  次

1. アルゼンチン
 1) 経済概況
 2) 受注状況
 3) コストの状況
 4) 金型価格
 5) その他の事項
2. ベルギー
 1) 経済概況
 2) 機械工業の状況
 3) 金型部門
3. カナダ
 1) 経済概況
 2) 金型産業の業況
 3) 外国人技能者の金型および機械加工業に受け入れの臨時措置
 4) 他の工業会との国際的共同作業
 5) 必要技術の公布(G,D&T CDRom 訓練コース)
4. フィンランド
 1) 一般経済指標
 2) 金型業界動向(2001年1月1日〜3月31日)
5. フランス
 1) 市況
 2) 金型産業の動向
 3) 工業会の特別な出来事およびニュース
 4) インターネットURL
6. ドイツ
 1) 2000年の経済概況
 2) 現状と将来予測
7. イタリー
8. 日本
 1) 経済概況
 2) 金型産業の状況
 3) 2001年度の予測
9. オランダ
 1) 概況
10.ポルトガル
 1) 世界経済の概況
 2)ポルトガル経済
 3)ポルガルのモールド産業
11.スペイン
 1)経済概況
 2)受注状況
 3)コストの状況(賃金と材料費)
 4)価格と収益
 5)将来の見通し
 6)その他のコメント
12.スウェーデン
 1)経済指標
 2)製造業の業況
13.スイス
 1)経済概況
 2)2001年度の見込み
 3)金型産業概況
14.イギリス
 1)産業界の概況
 2)将来に向けての投資
15.アメリカ
 1)経済予測概況
 2)製造業不振の統計的側面
 3)工場設備稼働率の減少
 4)収益―不況は深化
 5)過剰な設備投資が設備の余剰を生む
 6)近年の経済における設備投資の役割
 7)トンネルの先の明かり
 8)改訂予測

アルゼンチン

(2001年3月末現在)

1) 経済概況

A) インフレ率      消費者物価指数     卸売物価指数
    月次           +0.2        −0.2
 12ヶ月累積          −1.0        −0.7
B) 経済成長率       2001年予測     +2.4%
C) 失業率          2001年3月      +14.7%
D) 為替レート        1$=1US$
E) 輸出と輸入        ともに増加

2) 受注状況

主要企業の注文残高は4ヶ月
ユーロとレアル(ブラジル通貨)の為替レートの低下によって金型産業の輸出競争力は低下

3) コストの状況

賃金水準は安定
原材料、鋼材、設計料および特殊加工費は個別折衝により低下
サービス料金は低下を続ける通信料以外は安定している
燃料費は上昇

4)金型価格

販売価格は低下
利益も低下
支払条件は悪化

5)その他の事項

最近3年間で大企業の購買方針は:
価格の引き下げ
支払条件の引き下げ
短納期
品質管理の認定証取得
を求めてきている
借り入れ金利は工業先進国に比べて高い

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ベルギー

1)経済概況

 
1997
1998
1999
2000
2001
2002
 GDP(100万ユーロ)
215.974
225.126
233.597
246.004
259.212
272.325
 GDP
3.5%
2.4%
2.7%
4.0%
3.0%
3.1%
 インフレ率
1.5%
0.9%
1.1%
2.7%
1.9%
3.1%
 失業率
9.4%
9.5%
8.8%
7.0%
6.5%
6.1%

2)機械工業の状況

  2000年の機械工業の生産高は1999年比で7%の増加となった。
 また就業者もわずかだが増加した。平均設備稼働率は87%以上であった。しかしながら、2000年第4四半期以降、稼働率は85%に低下し2001年第1四半期もこの傾向は続いている。第2四半期は状況はさらに悪化し、予測ではこの数値以上の低下となる見込みである。受注は不足し、グローバル市場における地位は低下しつつある。受注低下率は平均して10%である。
 なお、機会工業界では十分な能力を持った技術者を充足できず苦しんでいる。

3)金型部門

  金型産業は一層悪い状況にある。平均設備稼働率2000年度の90%以上から2001年には85%となった。2000年第1四半期は苦しい状況であったが、第2四半期はさらに悪化が伝えられている。すでに2001年度の受注高は平均で30%の低下であった。国内、輸出市場とも全受注高は不満足な状況である。
 自動車業界からの大口発注は常に遅れがちである。これらの受注が実現すれば事態は変わるかもしれない。
金型企業のもうひとつの悩みは、熟練技術者を見つけにくいことと、引き止めるのが難しいということである。

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カナダ
(2001年5月現在)

1) 経済概況

要点

国内総生産  第1四半期に0.3%の上昇、しかし製造業については自動車、エレクトロニクスともに軟調
失業率     2月に減少したものの3月には増加に転じた
カナダドル   相変わらず軟調、世界中の外貨の米国流入の影響をうけた
貿易黒字    輸入は激減、一方輸出はわずかながら伸張、その結果貿易黒字は2001年初頭記録的数字となった。
          カナダドル= 63.92セント米ドル(2001年3月)
米連邦公定歩合 米国経済の停滞の対策として公定歩合が引き下げられた
インフレ率   インフレ率は依然2%の水準、エネルギー関連商品は17.2%の上昇、しかしエネルギー非関連商品は
          鉄、非鉄金属の価格低下の影響で8.0%の下落
金利       短期金利は5.25%に低下、長期は5.8%に上昇

金型産業の業況

 受注は85%の稼働率水準を維持、熟練工不足は変わらず、しかし超繁忙状態一服でやや緩和。平均して工場は週40時間の稼動、しかし賃金と材料代は徐々に上昇。

外国人技能者の金型および機械加工業に受け入れの臨時措置

 オンタリオ州における金型ならびに機械加工の熟練技能者不足の対策としてCTMA(カナダ金型工業会)は他の6工業会と政府のと協力して協定を作り上げた。
 この協定の主要な項目は、徒弟工を訓練のために雇用することを奨励することにあり、外国人労働者はその訓練を援助するため24ヶ月以内の期間カナダで就労することができるとするものである。
協力6工業会は:自動車部品工業会、カナダダイカスト工業会、カナダモールド型工業会およびカナダとオンタリオ州政府などである。
 精密加工および金型産業部門は徒弟工養成および傘下の8工業会および多数の会員各社の計画的訓練計画についての広範な援助と情報の提供を引き続きうけることができる。

他の工業会との国際的共同事業

 カナダの他の工業会との対話と相互訪問が行われ、その中にはCTMAと韓国金型工業会の代表者たち、香港の生産性協議会、イタリーの工作機械、ロボットならびにオートメーション工業会との交流を含んでいる。
 一方カナダの視察団は1月にメキシコ訪問を成功裏に行った。その返礼としてメキシコプラスティック工業会(IMPI)からのカナダ訪問が行われ、カナダ企業との研究、コンサルティング、戦略的連帯についての可能性が協議された。

必要技術の公布―(G、D&T CDRom 訓練コース)

 このコースはオンタリオ州大学省との協力によって推進された。CTMAは北米の大企業、ならびに中小企業の要望にこたえるべくこれを普及することに努めている。

 CTMA会長ルイM.パップ  CTMA役員、ISTMA Americas 専務理事レスペイン

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フィンランド

2001年第1四半期

1. 一般経済指標

 
1999
2000
2001
 GNP(%)
+3.5
+5.0
+4.0
 インフレ率(%)
+1.2
+2.5
+2.0
 失業率(%)
10.2
9.0
8.0
 設備投資(%)
+5.0
+8.0
+7.0

2. 金型業界動向/2001年1月1日−3月31日の期間
引合い:     多数
受注:      比較的良好なるも下降気味
受注残高:   比較的良好(3か月分)
設備稼働率:   95%;大部分の企業は2シフトで操業。重要機械は3シフト。
価格:      安定している。
材料コスト:   +3%
設備投資:   売上高の7%を機械に、3%を建物に。
利益:      +2%
将来予測:   金型需要は増加している。エリクソンのモバイルフォーンに関連する企業は先行き多少の問題あり。
          しかしながら工業会の見解としては2001年中はすべての企業に十分な受注があると予測。リ−ド
          タイムの短縮に大きな関心が払われている。

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フランス
2001年5月現在

1. 市況

  1999年の第2四半期からの4半期のGDPの成長率は4%であったが、2000年に入ってから9ヶ月間のGDPは2.5−3%と軟化した。しかし最後の第4四半期再び加速、前の4半期と比べ0,9%増加した。アメリカ経済の鈍化した結果としての国際経済のかなりの悪化を考えればこれはおそらく驚くべきことであろう。
 
 事実、2000年度の成長のパターンは総需要と輸入高に照らして検証する必要がある。需要面で見るとそれ以前に比べ何ら増加の兆候は見られなかった。したがって、生産の低下は生産能力が増加したことからくるプレッシャーと要員確保の困難さから発生した。フランスの企業は寄せられる需要に対応して輸入を増加させた。しかしながら第4四半期にはいって需要はモデレートに低下、一方企業の側での設備投資強化の動きもあって生産に対するプレッシャーも低下し、結果として2000年の終わりに向かって国内生産の堅調な成長と輸入率の減少となってあらわれた。
 第4四半期の加速をそのまま延長して予測することはできない。産業統計によれば生産活動は2001年当初にはややスローダウンしたかと思われる。輸出需要はかなり低下した。これに反し、国内需要の強さは成長率の極端な低下に対する浮揚力となるだろう。

2. 金型産業の動向

 2001年度の操業度はまずまずであろう、しかし2000年度に比べ展望は必ずしも明るくない。受注未決定や発注遅れとなった商談や、自動車産業からのプレッシャーは企業に不安感を与えつつある。通信業界における設備投資の削減も業界に直接響く。しかしながら業界は7月−9月にかけての回復に期待している。
 顧客からの価格引き下げ圧力は依然強い。

 賃金状況:1年前決まった週35時間制度によってそれ以前は実質35時間働いていなかった職員に対し約2%の賃上げが行われた。35時間制の適用によって企業の実質賃率の増加は+8%から+10%となる。大部分の企業は全般的に月給を2−2.5%引き上げた。他方経営幹部に対してだけ目的に応じて賃上げを行った企業もある。

 能力の高い労働力の不足は企業にとって依然として大きな問題である。

3. 工業会の特別な出来事およびニュース

  3つの工業会すなわちAFIM(モールド、パターン、モデルの工業会)、GIMEF(スタンピング、ツーリング、加工およびスピニングの工業会)およびSNFR(バネ工業会)は合同で6月に総会を開き3っの主要トピック、"企業連合"、"35時間労働−時限爆弾"および21世紀の展望"について討議する予定である。

インターネット
 それぞれの工業会のウェブサイトを開きメンバー企業の活動状況とデータベースを提供している。
 それぞれのウェブサイトは:
                    ・ UFIMO  www.ufimo.com
                    ・ AFIM   www.proplast.org
                    ・ GIMEF  www.gimef-france.com
                    ・ SNFR   www.snfr-france.com

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ドイツ

1.2000年度の経済概況

  ドイツの金型産業にとって2000年はよい年であった。主要需要業界における商品ラインの増加に伴って−特に自動車とエレクトロニクス−売上高は顕著に増加した。
 総売上高は1998年の5,9百万マルクから2000年度は6、5百万マルクへ増加した。

ドイツ金型産業の生産高
100万ドイツマルク

 
1998
1999
2000
増減1999/2000
 プラスティック、ゴム型
2678
2834
3191
+13%
 金属加工用プレス型
2162
2184
2252
+ 3%
 特殊加工用冶具取付け具
708
687
618
-10%
 金属用あるいは金属カーバイド用型
395
423
456
+ 8%
 合計
5943
6128
6517
+ 6%

順調な発展はドイツ全体、および主要需要業界の良好な経済状況によるものである。しかしそれ以上に好調の原因は品質、設計およびオートメーションが高度化してハイテク金型に対する需要が増えたことにあるといえる。

ドイツの金型の輸出高
100万ドイツマルク

 
1998
1999
2000
増減1999/2000
 プラスティック、ゴム型
1177
1273
1295
+1.7%
 金属加工用プレス型
508
592
577
-2.6%
 特殊加工用冶具取付け具
117
130
133
+2.2%
 金属用あるいは金属カーバイド用型
145
168
172
+1.6%
 合計
1949
2163
2178
+0.5%

この輸出統計からみれば金型生産高の増加は主として国内需要の増加によることがわかる。

2. 現状と将来予測

  価格水準と収益率に付いては依然強い圧力を受けている。これは主要顧客産業界における熾烈な価格競争と需要業界の集中、合併によるものである。設備稼働率は高い。雇用水準は高い。とはいうもののドイツ製造業界は熟練技能者不足という大きな問題を抱えている。
  これが経済発展の最大の制限条件である。
 調査によれば先月の受注は僅か低下した。ともかく昨年度の受注残高により2001年度も生産高は増加する見込みである。ただし成長率は落ちるであろう。

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イタリー

 イタリーは目下2001年5月13日に行われる総選挙の結果待ちの状態にある。中道左派政府の任期は終わろうとしているがまずまず結果は良好であるとの評価である。すなわちユーロ地域との全面的連帯、インフレ率がヨーロッパ平均にまで下がったこと、失業率の低下等々(公的債務が増大したことを除けば)すべてのファンダメンタルが改善された。過去5年間にイタリーの歴史が重要な転換を遂げたことは確かである。
 多分中道右派が勝利を収めるものと思われるが勿論さらに好ましい方向をたどるだろう。

 金型産業の市況は現在かなり明るい。2000年という年はこれまで長い年月の間の最良の年であるといえる。2001年もまた記録を更新するものと思われる。
 他国の同業諸氏にイタリーの金型メーカーのムードをお知らせするのに都合のよい資料として、最近(2001年4月号)の業界誌"STAMPI"が行ったアンケートの結果を利用してみる。

販売価格: 65%は変化なし
        19%は低下
        16%は上昇
雇用状況: 53%は変化なし
        4%は減少
        43%は増加
投資状況: 50%は変化なし
        50%は増加
同じ調査によると:
大型プレス型メーカーは注残8ヶ月
小型プレス型メーカーは注残6ヶ月
大型モールド型メーカーは注残7ヶ月
小型モールド型メーカーは注残4ヶ月

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日 本

1. 経済概況

  2000年上半期、日本経済はIT革新への傾斜が誘因となって半導体産業を中心に設備投資が活発でむしろ好調であった。しかし下半期に入って次第に下降し、2001年初頭からは落ち込みが一段と激しくなった。停滞の原因の一半はアメリカの景気後退によるが、IT関連産業の過大な拡張がその主因であった。
 また、日本経済がデフレスパイラルに陥ったのではないか、との懸念もぬぐいがたい。ほとんどすべての商品の価格は弱含みであり、あるいは下降しているため賃金の上昇もない。賃金水準の低い近隣諸国からの輸入増加も原因の一部ではあるが、需要の縮小がデフレ傾向に拍車を掛けている。上記のような要因を考えれば2001年の日本経済を楽観視することはできない、むしろGDPがマイナス成長になる可能性も否定できない。

2. 金型産業の状況

  2000年度の金型生産高は4250億円(機械統計)で前年比7%マイナスであった。添付のグラフに明らかなように生産高はピークであった1997年から低下しつづけている。景気後退がその原因の一つであるのは間違いないが、その他の要因がより大きなインパクトを与えているのかもしれない。
 すなわち、需要業界のアジア地域への海外移転はその要因の一つである。海外移転の初期の段階では、金型の現地調達は技術的な理由で困難であった。しかし技術水準の向上に伴い日本の金型を置き換えることができるようになってきた。したがって日本の移転企業は積極的に現地の金型の調達比率を高めている。
 特に家電産業ではその傾向が顕著であるが、自動車産業でも現地調達が増加しつつある。
 二番目として需要業界からのコストダウンについての要求がますます強くなっていることが原因の一つにあげられる。同じような設計の金型の価格水準は過去数年の間に数十%低下したと見られる。これは統計によっても明らかに実証される。
 たとえば上記のように2000年度の生産高は前年比7%減であった。しかるに全金型生産を重量でみると2%の増加である。さらに同じ年度の数量による統計では60%の増加となっている。製品数量による統計についてまわる不確実な要素を考慮に入れても金型の単価がかなり低下しているとみることはできよう。
 三番目にアジア諸国の技術進歩もその理由の一つに上げられる。韓国、台湾は日本のメーカーの競合相手であったが、近年は中国のような金型生産国が現れている。特に中国は、台湾、香港などからの技術移転を利用して、精密、高性能の金型を除きいまやほとんどすべての種類の金型を作ることができる。したがって日本からの金型輸出が増加する可能性は少ない。

3. 2001年度予測

  上記の条件に照らし、日本の金型業界は2001年度も依然としてきびしい状況が続くと思われる。日本の金型メーカーとしてはひとつの戦略として"グローバルニッチ"をめざし、より一層高級な、高精度の型を開発することに注力することが必要であろう。
(添付グラフ、統計表参照)

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オランダ

(注記:オランダは経済研究所の詳細な経済レポートを報告したのみで金型産業についての報告がない。本報告ではそのアブストラクトのみ訳出する)

概要

 2000年には4年連続で約4%の経済成長を達成した。輸出は依然この数年間の好調を持続した。しかし今年および明年は輸出の寄与率は、世界経済のスローダウンの影響を受け、またオランダの競争力の低下によって下がるだろう。民間消費は過去3年の平均の4%以上の拡大が2001−2002年にわたって維持されよう。これは今年の減税の恩恵を少なからず受けたことによる。その結果、2001年の経済成長率は31/4%,2002年には21/4%とヨーロッパの平均を上回るものと思われる。
 しかし、成長率が低下するため長く続いた失業率の低下に歯止めがかかると予測される。
 合意に基づく賃金の上昇(ワッセナー合意とよばれる官、産、労の労働条件についての社会協約)とインフレは今年は約4%と高いレベルになるであろう。来年はこれらの数値はそれぞれ3%および2%の水準に戻るものと思われる。
 以下に今後の見込みを要約する。

・ GDP成長率は低下
・ 輸出伸び率はほぼ半減
・ 賃金の緩やかな上昇がこれまでの成功の鍵
・ しかし民間消費は今年加速しそう
・ インフレは2001年がピーク
・ 賃金水準は上昇、企業の利益率は低下
・ 社会契約についての不確定変数は2002年には増大(調整インフレ係数は実質所得を1/2%押し上げる)
・ 雇用市場はこれ以上タイトにならない
・ 財政状況は好転する
・ 結論として

 世界的な不況はオランダ経済にとっても歓迎すべきものではない。
 民間消費は税制の改正によって、ここ数年間と同じ水準を維持するだろうが、一方で輸出伸び率の急減によって経済の過熱は防がれる。労働市場は構造的な平衡状態を今後数年間続けるだろう。現在の失業率のまま雇用環境がこれ以上タイトになる可能性は少ない。したがって求人が休職と拮抗する時点は先に伸びるだろう。
 雇用が休職を上回れば急激な雇用インフレが起こり、競争力の低下と失業率の上昇をもたらす。競争力はすでに失われてしまったが、これは雇用創出の代価と考えるべきである。
 ユーロは今後強くなるものと予想されるが、その結果競争力は弱まるだろう。オランダの輸出市場におけるシェアは輸入品の価格低下というメリットがあってもプレッシャーを受けるだろう。

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ポルトガル

世界経済概況

  ヨーロッパ連合事務局はGDP伸び率の予測を2001年と2002年についてそれぞれ2.8%、2.9%と、今までより低く見積もっているが世界経済にも影響するヨーロッパ全体の経済としては最悪の状態の下降局面からは脱するものと思われる。

 アメリカ経済のスローダウン(成長率は2000年の5%から今年は1.6%に低下の見込み)の影響はヨーロッパにとっては限定的なものであろう、なぜならアメリカとEUとの貿易はユーロ地域のGDPの3%に過ぎないからである。
尚、アメリカの景気下降も短期間のものと思われる。

 2000年の日本のGDPの伸び率は1.7%と僅かなものにとどまったが、それでも1999年の0.8%に比べれば改善であった。

 米ドルに対するユーロの為替レートの低下と、EUにおける賃金上昇の上げどまりによって工業生産ならびに輸出は高い水準を維持した。

 ヨーロッパ連合事務局は今後2年間に390万の雇用が生み出されると予測している。その結果失業率は7.9%に下がり過去15年間の最低の水準なると予測している。

 今年のユーロ地域のインフレ率は今年2.2%、2002年にはさらに1.8%に低下すると予測される。

ポルトガル経済

 ポルトガル経済はEU平均に比較して主要マクロ経済指標を同レベルに保つのに多少の困難があった。
 2001年の最初の数ヶ月の経済指標によれば、いづれも下降を示しており、その結果民間消費と設備投資が振るわない(特に建設業、運送業)。
 ポルトガル商品に対する外需も振るわない。この傾向は2000年から引き続いており、ポルトガル企業の生産、在庫、受注計画に弱気の傾向が見られる。

 2000年には、諸外国との通常貿易の流れは1999年に比較し12.5%の増加であった。1999年にはそれが僅か3.5%であった。
その主な理由は価格水準が1999年に比較6.2%上昇したことによるもので、1999年にはそれが逆に1.6%のマイナスであった。

 しかしながら、商品の輸入は急ピッチで増加しており、簿駅収支の大幅な赤字の原因となっている。

 2000年度の輸入は約14.4%増加した。これに対し1999年は8.7%の増加であった。この場合輸入価格が9.3%上昇したことの影響が大きかった(1999年は−1.4%)が、その主な理由は国際市場における石油価格の上昇によるものであった。

 平均インフレ率は2000年には2.8%と、1999年の2.2%を上回った。

 2000年のGDPの伸び率は3%であったが同じ数値が今年度についても予測されている(ポルトガル政府予測)。ヨーロッパ連合事務局はこれに対し2.6%に低下すると予測している。

 金利水準は反転上昇し始め、企業への1999年12月の貸出金利は5.1%であったものが2000年12月には約6.4%となった。しかしながら、今年に入って金利の低下が見られ、今年3月の平均レートは5.9%となった。

ポルトガルのモールド産業

 金型産業への貸出金利は全体的なマーケットのトレンドにあわせて上昇した。しかし業績のよい会社はよりよい条件で金利を決めている。

 設備投資の伸び率は前年より下がって生産高の約14%である。しかしながらこれでもポルトガルの全国平均に比べれば非常に高い水準である。

 ポルトガルのモールド型産業は輸出依存度が高いので、世界景気の後退(特に先進工業国での)影響は他の産業に比べてはるかに大きい。

 ポルトガルのモールドメーカーの賃金、材料、部品等のコストは安定している。熟練労働者の不足と、全般的な失業率の、特に金型産業の終結している地域での低さは業界にとってマイナスの要因である。

 ポルトガルの金型メーカーは全般的に繁忙である。価格水準は安定しており、業界には生産高も生産性も上昇しつづけている好例となる企業も多い。

 生産高に対比する一般管理費のウェイトはほぼ34%で安定している。

 ポルトガルのモールド産業の成長率は全国平均より低い。2000年のモールド産業の輸出はほぼ8.4%上昇し、前年を上回った。

ポルトガル総輸出額に対するモールドの輸出額

(単位10億エスクード)
年度

1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
総輸出額

2,474,4
2,975,6
3,501,8
3,795,9
4,195,0
4,608,8
4,784,8
5,379,3
増加率(%)

0,0
20,3
17,7
8,4
5,6
9,8
3,8
12,4
モールド輸出額

22,1
26,4
30,3
38,3
44,0
44,6
50,0
54,2
増加率(%)

0,0
19,5
14,8
26,4
14,9
5,9
7,3
8,4
ソース:Bank of Portugal and ICEP(Portugese Foreign Trade Office)  a)暫定値

            主要なマーケットはフランスを第1位として変化なし。

輸出−主要マーケット

(10億エスクード)
国名
1997
1998
1999
2000
金額
金額
金額
金額
アメリカ/カナダ
ドイツ
フランス
スペイン
スェーデン
オランダ
英国
ベルギー
イスラエル
ブラジル
その他
6.94
6.26
5.94
1.20
3.48
2.62
3.61
1.54
1,50
1,98
6,88
16.5%
14.9%
14.2%
2.9%
8.3%
6.2%
8.6%
3.7%
3.6%
4.7%
16.4%
7.01
7.05
5.12
1.92
2.54
1.89
5.63
1.40
1.68
3.92
8.45
15.0%
15.1%
11.0%
4.1%
5.5%
4.1%
12.1%
3.0%
3.6%
8.4%
18.1%
8.11
7.28
9.17
4.64
1.96
1.82
3.42
1.84
2.39
1.83
7.56
16.2%
14.6%
18.3%
9.3%
3.9%
3.6%
6.8%
3.7%
4.8%
3.7%
15.1%
9.8
6.8
10.1
5.5
2.7
2.5
5.4
1.4
1.9
1.1
7.0
18.4%
12.7%
18.6%
10.2%
4.9%
4.6%
10.0%
2.6%
3.6%
2.0%
12.4%
合計
41.,95
100%
46.60
100%
50.02
100%
54.21
100%
a) 暫定値

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スペイン

1. 経済概況

* 年度中間期のインフレ率: 3,9%(4月1日現在)
* 失業率: 労働人口の9,33%(3月1日現在)
* 経済成長率: 政府は2001年度見通しを当初の3,6%から3,2%に下方修正
* 銀行金利: ユーロ借入れ率、4,75%(3月1日現在)実効金利6%
* 物価と金利上昇に懸念あり

2. 受注状況

1. 国内市場
* いくつかの企業が新規プロジェクトを中止。これは金型企業にとって引合いと受注残高の減少を意味する。
2. 輸出市場
* 1999年度比でプレス型の輸出は10%増加、これに対しモールド型は13%減少した。

3. コストの状況(賃金と材料費)
* 労働力不足のため熟練工の賃金は大幅に上昇
* 材料費は大幅な値上げはなかった

4. 価格と収益
* 企業によっては生産性の上昇によって収益向上
* 業界全体の懸念は大企業の中に不利な支払条件を押し付ける会社があること

5. 将来の見通し
* 今後6ヶ月には生産が最低に落ち込む懸念あり

6. その他のコメント
前回のリポートで述べた傾向が続いている
* 2000年度多くの企業が機械設備を行った
* ISO9000を取得した企業が増えた(22%)
* 市場(中国など)によっては競争激化、インターネットビジネスでも競争
* 企業間の協力を進める動きがすでに成果をあげ、企業間資本提携も見られる

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スウェーデン

(スウェーデンは毎回経済調査機関による経済分析を提出し、金型産業についてのレポートがない。ここには経済全般についての概要のみ抽出して訳出する)

経済指標

失業率: 3,9%(2001年3月現在)
人口  : 8,885,452人
消費者物価指数: +1.9%(2001年3月/2000年3月)
経済成長率   : +3.6%(2000年第4四半期/1999年代4四半期)

製造業の業況

 第1四半期において業況は悪化を続けた。輸出市場、国内市場からの受注はともに減少。
 輸送機器、通信機器関連業界の受注は大幅に減少した。例外的に明るい業界は電気機器で需要は尚堅調である。
フル稼働の企業の数は昨年第4四半期に比し今年の第1四半期で減少した。金属加工労働者の不足は僅かに緩和した。

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スイス

経済概況

  2000年度はスイスの経済にとって非常によい年であった。GDPは3.4%増加。インフレ率は1.6%ときわめて低かった。1.9%の失業率は実質失業0を意味する。消費(家計)は2.2%増加、企業の設備投資は6.4%上昇した。

2001年度見込

インフレ率:     1.6%
失業率:       1.8%
実質経済成長率: 2.2%
一般消費:      1.8%
企業設備投資:   4.6%

金型産業概況

 昨年は金型産業にとって絶好調の年であった。輸出は17.5%伸びて3億2000万ユーロに達し、一方輸入は10.5%の伸びで1億9200万ユーロとなった。主要輸出入相手国はドイツ、オーストリア、イタリ−である。
 今年についてはすべての主要メンバー会社は受注が落ちているとのコメントを寄せている。業界の直面する最大の問題点は経験をつんだ熟練者の不足である。これがもたらす影響は賃金上昇のプレッシャーである。企業としては現在のスタッフの給料を上げるのみならず新人を求めるのに財政的な負担がかかるのである。熟練者不足はまた現有スタッフにストレスがたまるもとになっている。

(輸出入の国別グラフは省略する)

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イギリス

産業界の概況

 過去25年の間イギリス経済は製造業からサービス産業−特に金融やコンピューターーサービスのようなビジネスサービス、設備貸出業、会計業務やや下がって健康、教育、公共サービス−に移行してきた。

 製造業とサービス産業は多くの場合わけ難い形で経済活動となってあらわれる。おのおのが一方のインプットとなり、それぞれの製品は二つの産業の一部分となっていることが多い。たとえば自動車産業は自動車という製品のほかに金融サービス、保険やその他のサービスも営む。

 イギリスとその他のEUの産業構造は似通っている。サービス産業はとりわけ大事であって、輸送、通信、金融サービス、ホテル、ケータリング産業はイギリスではGDPのほぼ半分を占める。製造業は規模としては小さいが重要産業でGDPの約18%を占める。

将来にむけての投資

 明日のビジネスの成果は現在の投資のあり方にかかっている。わが国の将来のの繁栄と他の国より早い成長をとげる力もまた今日の投資にかかっている。

 イギリスが、他のヨーロッパの主要な国々より、いくつかのサービス産業の分野でより多くの投資を行っていることを示す証拠がある。たとえば、イギリスは物流、ホテル、ケータリングサービス、内陸輸送にフランス、イタリ−、ドイツの平均以上に投資を行い、特に金融サービスでは最大級の投資を行っている。それにもかかわらずサービス産業への投資はつぎはぎであった。1990年から1994年にかけてホテル業、ケータリング、自動車販売業の不動産投資、設備投資は減少した。一方で輸送、通信、個人向けあるいはその他のサービス産業での投資は増大した。

 製造業部門の投資実績はやや力強さに欠ける。1992年の初めに始まった現在の景気回復期でも製造業部門の投資は限定的なものでしかなかった。

総括

 製造業とりわけ金型製造部門におけるイギリスと、私の確信するところでは、ほとんどの先進経済国の将来の繁栄は先端製造技術、より少ない労働の投入と高付加価値にかかっている。
薬品、航空宇宙と化学部門がイギリスの全産業部門の研究開発費の三分の一を占めている。

GTMA専務理事
Steve Eyles(スティーブ アイルス)

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アメリカ

経済予測概要

 前回のNTMAの予測レポートのときから製造業部門の下降はより大きなペースで続いている。アメリカのエコノミストの間ではアメリカの経済がリセッションのはじめであるか否かに付いて議論があるが、製造業についてはリセッションが深まっていることについて認識の不一致はない。NTMAの会員企業売上予測は製造業全体と同じように突然悪化した。
 NTMAがこの予測レポートを複数の執筆者によって作成するようになってから今年は27回目になる。そしてNTMAの需要業界の現在の凋落はまったく突然であり、今まで経験したことのないほどの急降下である。つい最近の1月にNTMAが半年に一度の業況のアンケート調査を行ったときには、600社以上の会員が今年はほどほどの売上の伸びを期待しているとのことであった。ところが売上増どころか市場は急速な下降を示すこととなった。NTMAの傘下企業の中には熟練金型工の整理や早期退職勧告というきわめて異例な生き残りの手段をとらざるを得ないところもある。

製造業不振の統計的側面

 このNTMAレポートを作成している時点で、製造業関連での統計資料となるのは信頼度の高い全米購買協会(NAPM)の月例調査である。3月の調査報告によれば"製造業は8ヶ月連続して下降しており、回復の起爆剤となるべき業種が見当たらない"としている。
 全体の購買責任者指標(PMI)は、いくつかのNAPMの関連指標を複合したものであるが、3月度は43.1%であった。この指標が50パーセントを下回ることは製造業が縮小していることを示す。2000年度第4四半期のPMI複合指標の低下率は1984年以来最も激しい落ち込みである。
 NAPMのその他の主要指標を見るとその他のことが見えてくる。生産指数は42.8%で4ヶ月連続の落ち込みである。新規受注指数は42.3%でこれは9ヶ月続いての低下。受注残高指標は43.5%−11ヶ月連続の低下である。
実際にも製造業の下降はNAPMの調査の予測より早く始まっている。工場設備稼働率−NTMAの会員企業にとっての主要な指標であるが−は2年近く徐々に低下している。工場の雇用は1999年から下降し始めている。3月の8万人の工場労働者の解雇を含めて、雇用は1999年以来ほぼ40万人減少した。
 皮肉にもこのほぼ同一期間、米国経済は好調で消費関連産業では雇用を増加しはじめている。
 製造業不況の主な要因は、消費伸び率の低下、在庫の増大、新規設備発注の減少と、それ以上に輸入商品の増大であり、ツーリングのマーケットにとって重要なのは顧客のキャッシュフローの減少である。

工場設備稼働率の減少

  いままでのNTMA予測レポートでしばしば述べたように、顧客の工場稼動率と利益率とはNTMAの売上予測に対する最も信頼することのできる先行指標である。
 FRB(連邦準備局)から出ている最新の製造業レポートによれば、工場設備稼働率は2月において76.6%に低下した。
 3月のデータはおそらくそれ以上の低下となるだろう。工場設備稼働率が80%以下に落ち込むとNTMA関連の売上は全般的に下がり、低下率が高いほど落ち込む程度が大きい、という経験則を思い出していただきたい。
 下表は、過去におけるNTMAのいくつかの主要顧客業界の、設備稼働率悪化の傾向を要約したものである。たった一つの業界だけが閾値の80%以上であるということに注目せられたい。

   
設備稼働率
 
 
2001,2月
2000,10月
2000,2月
金属加工製品*
73.8
76.6
77.8
モールド成形のプラスティック、及びゴム製品**
79.5
81.7
85.3
自動車及び部品
65.1
76.2
83.0
器具
81.2
81.1
78.9
工業機械
79.8
82.5
81.7
航空宇宙
72.4
69.8
71.7
       
*  ダイの需要業界      
** モールドの需要業界      

収益−不況は深化

 収益は1999年及び昨年の最初の3ヶ月はほぼ20%の率で伸びていたが、2000年最後の四半期で最低の線に落ち込んだ。マックグローヒルによる900社の調査によるとそれらの企業における収益は前年比11%も低下した。このように状況が乱高下したのは工場の突然の稼動低下による。
 昨年土台4四半期の工場設備稼働率は急に2.6%下がって79.1%となった。工場設備稼働率は今年2月にはさらに2%下がったため、2001年第1四半期の収益率はさらに下がることがほぼ確実である。去年第4四半期におけるNTMA主要需要業界の収益の低下率を、サンプリングして以下に示す。
 自動車75%、電気機器48%、ハンドツール35%、事務用機器33%、コンピュータ12%。
 2001年のこれからの収益予測はさらに下降すると見られるが、潜在的には第4四半期においていくらか改善の可能性がある。航空宇宙、医用機器及び計装機器等の需要業界には若干収益が改善して多少光が差す兆候もある。

過剰な設備投資が設備の余剰を生む

 アメリカ製造業のいくつかの部門は過去3年間多額の設備投資を行った。1996年から2000年第3四半期にかけて戦後平均ペースの2倍の率で設備投資が行われた。
 これらの新設備が軌道に乗り、在庫がつみあがった結果生産が停滞すれば多くの工場の設備稼働率は急速に下がり、その結果設備投資の削減画直ちに行われる。以上のようなタイムテーブルの意味するところは、増設した設備の大部分はいまアイドルとなり、次の経済成長が始まって余剰設備が稼動するのをまっている、ということになる。
 2000年の最終四半期には設備投資は5%低下した。第1四半期は20%の増加であった。今年第1四半期の減少率はさらに大きいと予測される。設備投資が長期の傾向線を上回ったときは、今年度行われるべき設備投資が後送りになる可能性が高い。
 2000年度当初からの9ヶ月間設備投資のほぼ半分を占めた−それもそれ以前の2年間より僅か少ない−ハイテク産業は過剰投資を絵に描いて示したような一例である。1996年から1999年の期間ハイテク産業の設備稼働率は90%を超えていた。しかしながら、成長率が下がる一方で急速に拡大された製造能力によって、この部門の本年第1四半期の稼働率は80.6%と僅か8ヶ月で驚くべき低下となった。この過程で収益、キャッシュフロー、新資本の源泉、のすべてが収縮した−それもしばしば突然に。驚くに当たらないことだがハイテク産業の設備投資はこれまでもドラステッィクに削減されてきたのである。
(FRBの分類に従えばハイテク産業とは半導体及び関連の電子部品、コンピュータ、及び通信機器をいう)

近年の経済における設備投資の役割

 昨年度、GDPの伸び率5%のうち設備投資の寄与率は少なくとも2%であった。さらに、それ以前の2年間でも設備投資は成長の大きなファクターであった。20世紀を通じて経済の拡大が民間設備主導であった時代は2,3回しかないがこれまでの3年間はそのうちの一回にあたる。いまや経済の下降局面にあって、この設備投資の縮小サイクルはビジネスリセッションといわれているがこれも妥当な言い方であろう。
 今、設備投資はしばらくの間逆噴射状況にあり、加えてドルが高いため輸出もままならず,一般消費のみが経済の牽引力として残る。たとえ消費が弱含みとはいえまだプラス方向である。意味深いことだが歴史的にも民間消費の減少が主導しなかったリセッションは例が少ないのである。2001年の第1四半期を通じて住宅建設は比較的堅調であった。通常の場合,住宅建設はリセッションの始まりにまず打撃を受けるものなのである。
これからの数ヶ月間の消費動向が現在の景気スローダウンの長さと深さを予測する重要な指標となるだろう。たとえ伸び率が下がっても経済成長を持続するためには消費性向が強くなければならない。失業率は低く抑え,個人所得は増えつづけなければならない。
 失業率が上昇すると消費意欲が減退する。これまで言及したように消費意欲が大きく減退して経済を不況に陥れる要因になるとまで考える必要はなさそうだ。
 2月と3月に行った消費動向調査では消費意欲の復活が見られ、これがひとつの明るさとなっている。これらの調査で注目すべき二つのポイントがある。すなわち現状にどう対処するかということと、将来の状況に対する期待度である。後者は特に製造業の将来を予測するのに最も信頼できるファクターであることが多い。過剰な設備能力があるため,工場が現在の過剰な設備を動かすことができるようになるまでには、消費者の購買が増加することが数ヶ月は必要である。最初の明るい兆候はNTMAの需要産業の工場稼働率が上昇するようになることだろう。このようなプロセスは第3四半期に起こる多少の可能性がある。FRBの金利引下げは資本財メーカーにとっていい材料だが間接的なものである。そうなるためにはいくつかのプロセスが経済システムを通じて機能するようにならなければならない。金利の低下が消費者の購買を増加させて在庫減少につながり,これが工場への新規発注の引き金となり生産の増加を促進し,工場の稼働率が上がって経常利益が上がりキャッシュフローがよくなる、という一連のプロセスが必要である。
 NTMAの各部門のうちでは、金型,専用機グループよりは精密機械加工部門が早くこのプロセスの恩恵を受けるだろう。
 おそらく消費者は住宅ローンの金利が大幅に下がるかたとえ半分になったとしたら、住宅を建てる意欲が湧くであろうが,かなりの余剰設備を抱えている事業経営者は設備稼働率75%の工場にいる限りそれほど積極的にはなれないだろう。
 それでも尚、設備投資をする意思決定を、たとええられる利益が1,2%しかないぎりぎりの線であったとしてもやる場合もある。FRBの政策がが一層金融緩和の方向に動けばNTMAの会員会社は借入れがしやすくなるだろう。銀行が近年きびしく実施してきた貸出条件を緩めることになるだろうからだ。アメリカの販売高が加速するようになったとしても,一部のアメリカの製造業が上昇に転ずるには普通のリードタイム以上に時間がかかるだろう。現在も増加しつつあるアメリカ市場に照準を合わせている多数のアジアのメーカーもまた、アメリカの小売販売のスローダウンのため過剰在庫を抱えているからである。財政基盤が弱い彼らはできるだけ早く在庫を処分したいのである。2,3年前のアジア経済危機のときの"店じまい"価格に近い大安売りがまた始まるだろう。
 アメリカの小売業者はてぐすね引いてその機会をうかがっている。景気回復の初期には多くの注文は海外に行ってしまい、打撃を受けたアメリカの産業は小売段階で景気回復があってから,アメリカのメーカーに注文が回ってくるまで普段のとき以上に苦しまねばならないだろう。これが、アメリカの製造業の目に見える回復は、たとえリセッションに陥ることが避けられたとしても第3四半期の終わりまでは見られないだろう、という結論に到達するための主な理由の一つである

トンネルの先の明かり

 現状ではすべて暗い話ばかりだが,将来明るくなる兆候がないわけではない。今年第1四半期に入って雇用が再び上昇し始めた。小売段階での販売も、小幅ながら再び増加し始めたかに見える。まもなく、金利引下げの効果も現れるだろう。そして遅かれ早かれアメリカドルもより実態に即した水準に落ち着き、アメリカの輸出も増える方向に働き,輸入品の市場価格が上がるようになるだろう。
 2001年の残った月日でいえば,精密機械加工分野は金型に比べればまだ厳しさが少ないだろう。より長い目で見れば、精密機械加工サービスに対する需要はアメリカの工場の繁簡のサイクルによって変動を繰り返しつつも、長期的には増加の方向にある。
 製造業者はますますリーンな効率経営をめざし,機械加工のアウトソースをふやして損益分岐点を下げようとするだろう。自社内の機械加工部門の容赦のない閉鎖が、NTMAの需要産業で進んでいる。
それでも一方では、NTMAの顧客の中には,不況の期間自社の設備を稼動させるために機械加工を取り戻す例はあるにはあるのだが。
 長期的に見て、金型部門に何が起こるかは,金型の輸入がどう推移するかに大いに関係してくる。そしてまた金型を必要とする製品が海外生産となるかどうかによっても左右される。
 将来のドルの為替レートがそのような製品の輸入のレベルに大きな影響をもつ−輸出についても同じことである。前に述べたように,ドルはいつまでも非現実的なほど高いわけはないのである。

改定予測

 急速に変わりつつある市場の状況に照らし、われわれはNTMAの製品各部門について見直しを行った。新しい予測数字を以下に記す。前回の予測数字を括弧内に記しておいた。
ダイ(プレス型)は14%減少。(+2%)
モールド型は12%減少。(+3%)
専用機は10%減少の見込み。(+6%)
精密機械加工は9%減少の見込み。(−4%)
航空宇宙関連部門は15%増加の見込み。(+11%)
添付のグラフを参照されたい。

以上

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