<中部経済新聞 2002.12.16付:転載許可済み>
 
国際的な「共生と連携」の実現
 
金型産業の現状と展望−
 
愛知淑徳大学 浅井敬一朗
 

◆金型産業の現状

 現在もなお不況を脱しきれない経済状態の中で、日本の金型メーカーは極めて厳しい状況が続いている。ユーザーの海外進出に伴い金型の現地調達が進み、受注量が減少、ユーザーの金型投資額の抑制や同業者間での過当競争により、納入価格が大幅に下落するなど、多くの金型メーカーの財務状態は急激に悪化している。

 金型製作は、属人的な高いスキルが必要となるため技術移転に時間を要すること、周辺産業が未整備であることなどから、海外での金型製作は困難と思われてきた。しかし1990年代後半以降、中国や東南アジアへの海外移転が進められ、台湾や韓国などかつて早期に日本企業が進出した地域の金型の技術水準も向上し、一部の金型技術は日本にキャッチアップしていると考えられる。

◆金型図面の知的所有権問題

 金型ユーザーが日本の金型メーカーの作成した金型設計図面を利用して、より安価な金型を調達するために海外の金型メーカーに発注する問題が取沙汰され、本年7月、経済産業省より「金型図面や金型加工データの意図せざる流出の防止に関する指針」が示された。金型図面は、金型構造、製品の精度を出すための加工数値などノウハウの詰まったものと言っても過言ではない。金型設計図面に関する知的所有権については、現在のところ完全には法的保護ができる状態とは言えず、金型産業とユーザーの双方の対策が必要である。

 金型メーカーは、契約を通じて知的所有権を主張し続ける努力をすべきである。他方、ユーザーはコスト管理が購買政策上、国際競争を勝ち抜く重要なファクターではあるが、最終製品の品質を考慮したトータルコストの枠組みの中で金型調達コストを再評価するとともに、モノづくりの根幹となる技術を日本に残すという社会的理念を持つべきである。

◆金塑産業の展望

 金型メーカーは高い技術を開発すれば受注できるという、一国一城の主というプライドを持ったユーザーの分工場になってはいなかったか。今後は技術力に加え、営業力、ファイナンス力(資金調達力)が生き残りのカギとなる。

 このためには、例えば途上国を含めた国際規模での金型受注および金型のメンテナンスを行うコーディネートビジネスを立ち上げることも一つの方策となろう。金型メーカー同士あるいはユーザーとの国際的な「共生と連携」が、かけ声だけでなく現実のものにするべき時が来ているのではないか。

 このことは、「日本に残る(残すべき)金型は何であるのか」を見極めることにつながるであろう。コストダウンの追求は避けることは出来ないが、安価な金型製作だけを目指していては日本の金型産業の競争優位は失われてしまう。技術面のみならず、「結果としてユーザーの利益につながる金型」のニーズを世界規模で掘り起こすことが必要となるであろう。

 

 

copyright© Information Digital Office Inc.